制作をめぐる言葉 - 2022
主に透明な紙に裏から描く手法で制作しています。
絵画の表面と裏の交ざりあいや、絵画の内側にある「内臓」をとらえるために、薄いフィルム紙の裏側から描く手法で、見る側(観客)と見られる側(絵画)の交錯を起こすために描いています。
フランス語においてpeinture(絵画)は女性名詞とされています。この「女性名詞」というのは、現実の性とは関係ない文法の割りふりとしての名称でしかありません。しかし私にとって絵画はまさに女性だったことから、この手法のベースができあがりました。
描く時、私はいつも絵の裏側にいます。反転した裏面から描くことは、骨から内臓、そしてそれを包む皮膚を描いていくような感覚があります。絵具の層は、粘土で人型を作るのにも似ていて、重ねられるだけでなく、あらゆる方向に混ざり合いながら溶け合っていきます。 実際に人が見ることができるのは閉じられた絵画(からだ)の表面でしかないのかもしれない。 私はだんだんと、表と裏という二つの側面だけでなく、その間にあるものを探しはじめました。
「いつかのイコン」
2021年、独立戦争と第一次世界大戦の傷病兵の写真をもとにポートレイト作品を作り始めた。はじめ、私にとってそれは連続した制作の一つの流れだったが、予想を超えて現実の世界の流れが大河となり合流し、考えもしなかった大きな傷みを味わうことになった。
私の中の、絵画-女性-受動的なものという強いつながりは、このシリーズで変容しはじめた。今まで多く描かれていたのは少女のイメージだったが、このシリーズでは描かれたイメージはおもに顔面に傷を受けた兵士たちの写真をもとに作られており、どれも女性にも男性にも無性にも見える。
私はこの作品に一つ一つ名前をつけている。
(アレックス、チャーリー、テディ、アンディ、エリン、レイ、キム、ロビン、ライリー、フランシス、ノエル...)